以前、ある大手ドラッグストアのEC立上げのコンサルに入っていました。そこは、田舎町の田んぼの真ん中(創業者談)の小さな薬局一店舗から始まり、今は東証一部上場という、絵に描いたような成長を遂げたところです。
その会社の創立30周年(だったと思います)記念式典に呼ばれて、創業者の挨拶などを聞いているときに、衝撃的なグラフを目にしました。創業時から30年間の売上推移を表したグラフなのですが、最初の20年程度は見事に地を這うような低空飛行なのです。
その後、急激に成長カーブを描いていくのですが、その曲線が急すぎて(つまり増加が激しすぎて)、余計に最初の20年が低く見えるのですが、これが「生(なま)の姿」なんだなと、とても印象に残りました。
なぜ長期間の低空飛行から成長カーブを描くことができたのか。理由は当時の副社長からいろいろ聞きましたが、それは本題から外れるので割愛します。言いたいのは、
企業の成長は、低空飛行を経て曲線を描く
ということです。
多くの場合、この低空飛行に耐えられないんですよね。創業してすぐに○億円調達とか、そんな不思議な達成感(調達は達成ではなくスタート)を誇示するベンチャー企業も多いですが、そういうのを見ていると、そのスピードが成長には必要なんだと勘違いしてしまいます。
もちろん、成長スピードは会社によっても業界によってもまちまちです。しかし、創業していきなり成長をはじめ、それが直線的に伸びていくなんてことはありえません。企業の成長は、必ず曲線を描きます。そしてもちろん、時に沈んだりもします。それが生(なま)の姿です。
しかし、20年の低空飛行というのは、普通の人はとっくに諦めてしまうか、もうその低空飛行に慣れてしまって、自分はこんなものだと思うか。どちらかだと思います。私はそこに一番驚きました。
当時、私は副社長に直接依頼されてコンサルをしていましたので、そのことをそのまま副社長に伝えました。すると「自分はもうこのままこじんまりと行くのかなと思ってたけど、あるとき、社長がいつも行っている散髪屋さんとばったり会って話をしていると、社長はいつも”日本一のドラッグストアにする”と言っていると。それを聞いて、へー、そんなこと考えてるんだと思って(笑)。」とのことでした。
田舎の薬局一店舗のときに、既にそのようなことを散髪屋さんに話し、その想いを20年間、密かに持ち続けていたのです。びっくりですよね。
偉大な業績を残す人は、ある意味、非常識な変人です。「常識」を疑い、自分を信じ、コツコツと成すべきことを継続できる人なんだと思います。