中小企業が取り込むべき「トレンド」とは

世の中の企業の大半は、いわゆる中小企業です。その割合は99%以上。そして、全労働者のうち中小企業で働く人は全体の70%以上と言われます。

その中で、年商1億未満の零細企業が全体の80%、3億未満が90%。つまり、3億超えるともう上位10%の企業です。

そして、少し前の国税庁の調査によると、中小企業の70%が赤字。ほとんど儲からないのです。肌感覚では、IT以外のレガシー産業は、特にリーマン以降は中国の台頭、それに伴う単価の下落といった要因で、儲からない産業になってしまっている。

さらに、ここにきて様々な原材料価格が急激に上昇しており、不景気なのに物価が上がるスタグフレーションが始まっています。

この記事で書いたように、あらゆる産業でIT化(DX)が要求されているのは、そんな背景があります。

再編という名の淘汰

私は、中小企業を対象としたM&Aアドバイザーでもありますが、この業界はとても追い風です。国策として、国がM&Aを推し進めているからです

菅前政権が推し進めた中小企業再編策。前述のようにほとんど赤字の中小企業は、税金(法人税)を最低分しか払ってない。そういうところは、より力の強い会社に吸収してもらえばいい。乱暴に言えば、そういうことを進めているのです。今の岸田内閣は、ほぼ独自の政策を打ち出す能力がなさそうなので、このあたりの変化はなさそうです。というよりも、変化させようがないでしょう。

税収は、俗に10-5-3(トーゴーサン)と言われるように、サラリーマン10割、自営業者5割、一次産業3割という納税率とされています。つまり、サラリーマンはごまかしようがなく、自営業は5割、農業などの一次産業は7割ごまかしていると。

国にとっては、儲からない、納税しない企業はいらない。一次産業は、また違う国策がありますから、そうなるとターゲットは自営業者と中小企業です。

では、そこで働く社員たちの生活はどうなるんだということで、それならM&Aを進めましょうと。体力のある所に吸収してもらえと。それが国の方向性です。好むと好まざるとに関わらず、このような政策が進められているのは、どうやら確かなようです。

さらにここにきて、コロナ政策による経済被害と、DXをはじめとするビジネスの構造変化。スモールM&Aが活発になっている背景は、こういうことにも起因しています。

実体経済の行き詰まり

これは今に始まったことではありませんが、人口動態を見ても実体経済は既に行き詰まっていて、定期的に新しい波を意図的に作って活性化させる必要があるように感じます。すでに世界中至る所でモノが溢れかえっていて、パイの奪い合いです。

意図的な波とは、例えばエネルギー政策。脱炭素だのなんだの、それって本当に環境にいいのか、本当に脱炭素になるのか、そんな議論はこの政策の本質ではないのです。主力エネルギーを転換させることで、経済を活性化させることが目的です。

ここ数年よく耳にするSDGsもそうかもしれません。その概念は、別に真新しいことでもなんでもなく、これまで言っていたことの焼き増し+α程度と思えます。それでも、あたかも新しい概念のように打ち出すのは、世界的な経済刺激を目的としているという解釈がしっくりきます。

あるいは、楽天なんかのポートフォリオを見ると、どう見ても金融企業ですよね。楽天に限らず、大きくなった企業は金融方面に行くケースが多い。実体経済では伸びしろが少ないので、金融経済(お金がお金を生む経済)に比重を置いていることは一目でわかります。

そう考えたら、今世界で『EV、AI、暗号通貨、NFT』などのメガトレンドが押し寄せていることも、すんなり納得できます。

バブルが崩壊したら、また次のバブルを生み、また崩壊して次。そんなことを繰り返すのは、常に成長を求められる株式市場にいる企業の宿命なのかも。いずれにしても、近未来の人口構造から見ても、経済の伸びしろはIT、金融等の限られた分野にしかないと思って間違いないでしょう。

ITか、金融か

そう考えると、今後どんな事業を取り込むべきかは明白です。ITか金融の二択です。お金がお金を生むには、まず資本が必要です。自力か、人から集めるか。その覚悟と運用センスがない会社(私もそうです)は、もうIT一択。自社でやるか、IT系をM&Aするか。それくらい腹を括ってもいい時期だと、私は思います。

既に、店舗、工場、訪問営業など、地面に接するビジネスは、それだけでは伸びしろがありません。業界の中で、少ないパイを奪い合う消耗戦に終始します。今後は更に人も集まりません。

もちろん、今のパイを奪う戦術を日々考えることも重要だと思いますし、それはみなさんやっていると思います。しかし、今後の人口構造、経済の変化、そして今の中小企業政策を考えると、どう考えても今まで通りにはいかない。

世の経営者は、自分の会社をどうDX(デジタルを軸に会社を変容)させるか、あるいは戦略的にM&Aするか。真剣に考え、行動する時が来ています。それを一緒に考えませんか。

私の会社が、M&AとITの2軸なのは、その思想が反映されています。

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