リスケの数が2年で激増
金融庁からの発表では、コロナ禍にあるこの2年間(2020年初頭~2021年末)だけで、借入れの条件変更(リスケ)申請が約69万件。これは融資の口数ですが、推定で約11万社の会社がリスケを申し込み、そのほとんどが返済を止めている、または今後止める状態になっているということです。
コロナ前は、38万社が返済を止めていたので、合わせると中小企業の50万社近くが返済を止める計算になります。約400万社と言われる中小企業(個人事業含む)のうち、どれくらいの会社が借入れをしているのか不明ですが、恐らくほとんどの会社が該当すると思います。仮に350万社が借入れをしていると仮定すると、返済不能は約14%。
ご存知の方も多いと思いますが、リスケから復活する確率は1割程度です。2割はその後会社が何らかの形で消滅。7割はそのままの状態がズルズル続きます。10年以上リスケを継続している会社もあります。そうなると、もうそれが当たり前の状態になり、一向に減らない借入れ残高と、順調に歳を重ねる自分とのギャップに気付いたときに、心が病み始めます。
そして、コロナ融資は、既にリスケしている会社にも貸しているので、6割の返済が始まる今年(2022年)6月以降は、普通に考えてそれがもっと増えるはずです。
さらに言うと、既にコロナのジャブジャブ状態から一転して、貸し渋り、貸し剥がしの局面に入ってきています。国(つまり国民)がリスクを負う商品は、現時点で返済できていないところにもガンガン貸し付けて、それが終わると一転するというのは、いかにも銀行らしい。決算が出揃ってくる6月くらいからは、益々その傾向は強くなるでしょう。
これだけ見ても、かなり厳しい。加えて、これまで何度も書いているように、70歳以上の経営者が245万社になり、うち127万社に後継者がいないという、いわゆる2025年問題もあります。もちろん、これは2025年に突然始まるものではなく、既に始まっています。
加えて、コロナや中国政策の影響による物流の遅延と半導体不足。それに伴う物資の不足と高騰。そして、1月15日に起きたトンガ噴火による気候変動も予想され、特に食料は益々高騰するでしょう。不景気のまま物価が上がるスタグフレーションは、既に始まっています。
ネガティブを受け入れるのが、真のポジティブ
ネガティブなことではなく、希望を持とう。それはもちろん大切なのですが、現状を目隠しして希望を語っても、それは子供の夢と変わらない。嫌な現状も客観的に理解したうえで、打つべき手を考えないといけません。それが真のポジティブ思考だと、少なくとも私は考えています。
現状は、前述の通り多くの中小企業にとってはとてもシビアなものです。個人でビジネスしている範囲なら、マーケティングを勉強して「もっと稼ごう」でいいのかもしれませんが、人がたくさんいる企業にとっては、それだけでは済まない。徹底的に悲観的に考えて、それを避けるための戦術を考え、実行するのが経営者の役割です。俗に言うHope for the best, Prepare for the worst.ということです。
労働人口が減る(既に減っている)。社会保険の負担が増える(既に増え続けている)。物価が上がる(既に上がってきている)。コロナ関連の支出でこれから大増税が始まる。中小企業の70%が赤字。50万社が借入返済不能。銀行の貸し剥がしが始まる。245万社の社長が70歳を超える。127万社が後継者不在・・・。
これらは、既にわかっている事実です。
打つ手はいくつもある
その上で、打つべき手段は
- 人に依存しないビジネスモデルを作る
- デジタル商圏を取り込む
- 利益率を上げる
- 借入の個人保証をしない
- 個人保証を解除できる経営状況に改善する
- 市場を国外に広げる
- M&Aを視野に入れる
などでしょうか。というか、これらの何一つやらない会社で、生き残れるところはないでしょう。よほどの資金力がある会社以外は。
現状に耳を塞ぐことなく、ネガティブな現状を受け入れ、ただし悲観はせず、自社の体力や体制の中で打てる対策を打っていく。今の経営者には、そんな冷静さが求められています。