以前、私の会社で建築金物を扱うECサイトを手がけたことがありました。私自身は何一つ知識も経験もない分野でしたが、たまたまその業界出身の社員がいて、話を聞いているうちに、まず何かに特化してやってみようかと。
ひと口に建築金物と言っても、かなり幅が広いので、全カテゴリーを網羅しようとすれば膨大です。そこで、業者向けではなく、家を新築やリフォームする個人に対するアクセサリー金物に焦点を絞りました。
それでも、ジャンルは多岐に渡ります。そこで、比較的需要が多くて、強い競合サイトがない分野を探しました。この業界のECは大手が何社かあって、それぞれTVCMなんかもやっていて、SEOも強いのですが、その穴を探したのです。
まず、そのカテゴリーのキーワードで検索需要とインデックス数などを調べて、検索結果を調査します。1位から10位までのサイトをじっくり見て、勝てそうな場所がないか探しました。
そして、見つけた分野が『トイレットペーパーホルダー』。需要は結構あるのに、検索上位には大したサイトがない(当時の話ですよ)。まずはここに焦点を絞り、新築やリフォームなどでペーパーホルダーをおしゃれなのに買い換えたいニーズがたくさんあるに違いないと仮説を立て、徹底的に商品数と情報量を多くして打って出ました。
結果は、見事に思惑通り。トイレットペーパーホルダーではSEO1位になり、あっという間に競合にベンチマークされるサイトになりました。
この仮説が当たって、そこから一気にカテゴリーを増やしました。その時は物量作戦で、中国大連まで足を運んで現地のBPO企業に依頼して、一気に1万点以上の商品数にしました。
新築やリフォームの際に、その一部を施主さんが自分で買って、建築業者に渡すことを「施主支給」と言います。DIYや施主支給のニーズが増えてきた時代背景もあったのでしょう。サイトは一気に大きくなり、宅配便の出荷量は、その地域ではイオンモールに次ぐNo.2なりました。
そのサイトは、その後、他府県の商社に事業譲渡したのですが、思えば私が関わったM&Aの第一号は、そのサイトでした。
よく、ECはやりたいけど何を売ればいいのかわからないという声を聞きますが、そのような発想で商品を選定する方法もあります。モノにもよりますが、商品知識なんて、一定期間没頭しているうちに、自然とある程度身に付くものですよ。