少し前に、下記の記事を書きました。もう25年くらい前にシリコンバレーで出会った「還暦起業家」(本人談)の話を軸に、自社の企業価値を把握する重要性を書いています。
「幸せな出口」のために絶対に必要なことは、自社の企業価値を把握することです。なぜなら、M&A(第三者承継)にしても親族承継にしても、またはIPO(株式上場)にしても、何らかの『出口』の際には、自社の企業価値がすべての軸になるからです。
成功する起業家は、自社の企業価値を把握している
上記のブログで書いていますが、非上場の中小企業で自社の企業価値を把握している経営者は少数派です。大半の経営者は把握していません。そして、大半の中小企業は赤字経営です。
企業価値を把握してないから赤字だというわけでは、もちろんありません。しかし、利益が企業価値に深く関係している以上、自社の価値を把握していない企業に赤字が多いことは、何の不思議もありません。
現に、成長を続け、その後IPOあるいは大型売却でEXITした経営者は、私の知る限りすべて逆です。つまり、上記のブログで書いた還暦起業家同様、自社の企業価値を常に把握しています。
企業価値の把握が必要なタイミングは、出口だけではありません。金融機関からの融資を受ける際にも、それはとても重要な要素になります。なぜなら、多くの場合、融資は経営者保証とセットだからです。
経営者保証を外すのも、企業価値次第
この経営者保証については、過去に何度も書いてきました。
そして、その「外し方」も書いてきました。
これらを見るとわかると思いますが、経営者保証なしで融資を実行するなら、企業価値を高めるしかありません。
再度かんたんに整理しますと、経営者保証を外すには
- 財務の強化(BS、P/Lの改善)
- 公私混同がないこと(会社と個人の分離)
- 透明性が高いこと(金融機関への情報開示)
が大きな三本柱です。
これらは、「経営者保証に関するガイドライン」に載っている基本的な条件であり、実際はもっと複雑な事情が入り組んでいるものです。しかし、どんな会社であっても、企業価値を高めることが経営者保証を外す要諦であることに変わりはありません。
現場仕事は社長のサボり
企業価値とは、利益の大きさだけではありません。上記のような状況に加え、例えばM&A時にとても重要視されるのは「自走可能であること」です。
自走と言うと誤解を招くかもしれませんが、社長がいなくても会社が回っていくという意味ではありません。日常の現場(営業、製造、事務など)が、それぞれのリーダーを中心にきちんと回っていき、社長は定期的にリーダーからの報告を聞き、指示を出す。そんな役割分担が機能している状態のことを指します。
社員を雇用している会社では、社長の現場仕事は単なるサボりです。社長は基本的に何でもできるはずですが、それを社員たちと役割分担して成長を目指すのが、社員を雇用する目的のはずです。それが機能していないからと言って、自分が現場に出て仕事をした気になってるのは、サボり以外のなにものでもありません。
では、社長の仕事とは何でしょうか?
ひとことで集約するなら『企業価値を高めること』に尽きます。
- 財務を改善する
- 継続的な利益体質のための仕組みを構築し、根付かせる
- 社員の満足度を上げ、離職率を下げる
掲げたビジョンに向けて、これらを実行していくのが社長の役割です。
この重要性は、会社や自分の出口を具体的に考え始めたときに実感します。そして、なぜもっと早くに取り組まなかったのかと後悔します。企業価値の向上は、想像以上に時間のかかるものです。
私は、経営者の「幸せな出口」のための支援を、今後も強化していこうと思っています。