OK to Fail

新年なので、この社会に対して少し思うところを。

私は、ここのブログにも書きましたが、社会人になってからアメリカの大学に留学し、その流れで起業しました。起業前提でアメリカに行ったので、自分としては自然な流れでしたが、学生(F1)ビザのまま仕事を始めたので、一定期間はモグリですね。

当時、バークレーという町にいたのですが、そこから橋を渡って一時間ほどベイエリアを南下すると、いわゆるシリコンバレーと言われる地域があります。授業のないときに、レンタカーや電車でその町に行ってぷらぷらしていたのですが、気候もサンフランシスコに比べていいし、何よりあの田舎町的な空気が好きでした。

それまで、仕事はスーツにネクタイというドMファッションが普通だった私は、Tシャツ短パンで最先端のテクノロジーを操る連中が、とてもまぶしく見えました。当時から中国人とインド人がやたらと多かったですが、彼らもそこにいるとそんな空気に染まってるんですよね。当然、日本人も。

還暦から連続起業家になった日本人

そこで、曽我さんという人と出会いました。大手企業を定年後に、一人でアメリカで起業した還暦ベンチャーです。一度、サンノゼで一緒に食事したのですが、当時は「まあうちの価値なんてまだ○ミリオン程度ですよ(数字失念)」とサラッと言っていて、自社の価値をこうやって客観的に把握している姿に驚いた記憶があります。

60過ぎて、当面は奥さんを日本に残してひとりでアメリカに来て、事務所を借りた。でも、着いた日はまだアパートに入居できずに、事務所も電気が来てなかった。お金がもったいないから、蝋燭を買って、暗い事務所で一人弁当を食べた。そんな立上げ時の話も聞きました。

その後、しばらくして曽我さんは、なんとその会社をAppleに売却しました。スティーブジョブスに直でプレゼンしたそうです。その後しばらくは、MacのDVDオーサリングソフトは、曽我さんの会社が作ったものを使っていました。

その後も何社か設立して、60過ぎてからシリアルアントレプレナーとなり、今は80歳を過ぎています。

そういうことができる国なんですよね、アメリカは。その土台にあるのが

OK to Fail(失敗しても大丈夫)

というマインドです。

アメリカは、客観的に見てダメなところ、嫌いなところはいっぱいあるし、バカな奴はとんでもなくバカだけど、こういう空気は僕は好きなんです。失敗?それがどうした。またやればいいじゃん。という空気が。

それって、日本でよくお題目として掲げられている「多様性(ダイバーシティ)」なんですよね。根本にあるのは。

日本は多様性を受け入れてきた

国の成り立ちからして全然違うので、日本人がそうなれというのは、正直無理な話だと思います。やはり、異質なものは排除して、みんなと同じレールに乗ることを是とする国です。ただ、歴史的に見たら、そうなったのはもしかしたら明治以降じゃないかとも思えます。

キリスト教の布教を大義名分に、世界を征服しようとしていたスペイン、ポルトガルにしても、信長は受け入れていたんですよね。彼は天才的な戦略家なので、むしろそれを利用していた節があります。その後、秀吉は日本人奴隷貿易の実体を知って激怒し、バテレン追放令を出しますが、それでもバテレン(宣教師)だけです。

まあ、こういう事例を出すと、反論もたくさん出るのかもしれませんが、僕は日本人はいろんなものを受け入れるマインドは根本にあるように思えてならないんですよね。聖徳太子の外交も然り、平安時代のグローバリストである平清盛然り。でも、その多様性は「富国強兵」には障害になる。それが、明治以降に徹底排除された一因のように思えます。

失敗に寛容な社会が新陳代謝を活発にする

歴史的な背景はともかく、日本はセーフティネットなどの制度はしっかりあるのですが、もう少し、というかかなり、人のマインドや社会の空気として、失敗に寛容な国になってほしいと願っています。

社会が変化する時代は、何かに挑戦する人が増えることがとても重要です。しかし、もとより起業なんて成功確率のほうが低い。失敗したら、陰で何を言われるかわからない。そんな恐怖で後一歩を踏み出せない人が多い気がしてなりません。

僕に言わせれば、挑戦した人間を陰で嘲笑う奴らなんて、その時点で負け犬です。どうせロクなチャレンジもしてない連中です。が、そう思って振り切れる人が、まだまだ少ないんですね。

そうやってモタモタしてるうちに、EVや暗号通貨、電子マネー、AIなど次代の「メガトレンド」から日本は信じられないくらい遅れています。未だにEVを環境の観点で議論する風潮もありますが、根本的に間違ってます。環境にとっていいか悪いかではなく、世界的な超メガトレンドです

世界一の自動車会社であるトヨタでも、それには抗えません。つい先日、トヨタはようやくEV全振り宣言しましたが、今からどこまで巻き返せるか。同時に、それはすなわち、日本の自動車産業(販売、製造)の死を意味します。大半が不必要になるからです。それを守るためにトヨタが必死になっていたことを考えると、このEV宣言はこれまでの自動車産業の敗北宣言とも言えます。でも、どんな会社もこのトレンドには抗えません。

バブル崩壊のときのように、莫大な公的資金を使って死に体の銀行を救済するようなバカなことをしていると、日本の経済はそれこそ壊滅です。廃業率を上回る起業率で新陳代謝を活発にしていかないと、どうしようもない時代に入っているのです

そんなときに必要なのが『OK to Fail』のマインドです。

実際、私も大失敗の経験があります。しかし、そこでわかったのは、私のような凡人は失敗からしか学べないんだなということです。成功体験は、気持ちがいいけど学びにはさほど繋がらない。凡人は失敗から学ぶのです。

じゃんじゃん失敗すればいい。ただし、そのためにも個人保証はダメですOK to Failな社会にするための最大の物理的障害が、この個人保証です。そして、大きく言うと、それが国力の衰退に繋がっているのです。

経営者、フリーランス、起業予備軍の皆さんは、どうすれば個人保証を外せるのかをしっかり理解して、その状況に会社を改善していきましょう。そして、事実を膨らませて陰口をいうワイドショー脳のクズたちは、一切ガン無視しましょう。

そうすることで、OK to Failな土壌が少しずつ育まれていくんだと思います。

  • ブックマーク
  • Feedly