M&Aのゴールはどこだ?

私はM&Aアドバイザーとして、FA(ファイナンシャルアドバイザー=売り手/買い手のどちらかのアドバイザー)業務や仲介業務を行っています。

その中で常に肝に銘じているのは『ゴールを誤ってはいけない』ということ。

M&Aのゴールとは、契約の成立ではありません。もちろん、当社へのフィーは契約成立すれば入ってくるので、業務的にはそこを目指すわけですが、買った企業にとってはまさにそこがスタートです。売った企業にとっては、尚更そうです。多くの場合、新しい社長の下で、新しい業務がスタートするわけですから。

売却したことで、「幸せな出口」を見つけた売り手の社長もそうですね。そこで人生が終わるわけではなく、そこからが第二の人生です。年齢問わず、何かに再挑戦する人も少なからずいます。

つまり、M&AのゴールとはM&A後の成功を指すのです。決して、契約の締結ではありません。

私は企業経営者として、経営者の苦しみを大抵は理解できるくらいの失敗経験もしてきました。ですので、苦しい状況にある経営者には徹底的に寄り添い、針の穴ほどの解決策でも何とかしてこじ開けようとします。これまでがんばってきた社長には「幸せな出口」を持つ権利があるからです。そして、どんな状況でも打つ手はあることもわかっています。

でもね。大きな会社組織、特に銀行などのM&A部署に属する人で、そのような気持ちを持っているアドバイザーは、私の知る限りいません。それは無理もないことで、経験していないものを心から理解することはできないですよね。経験豊富な人はその限りではありませんが、経験の浅い、若い人は、エリート意識だけ強いような人もいます。

相手側のアドバイザーがこのようなタイプの場合、案件の成約しか考えてないかのような進め方をしてくることがあります。私はそのような進め方は断固拒否します。自分のお金でもないのに、「買ってやる感」満載で話す勘違い人種とは、口もききたくない。仕事上、しょうがないから話をするけれど、その通りに動いて、クライアントが幸せになるとは思えません。

私のM&Aのゴールは、クライアントの幸せです。それは経営者だけでなく、そこの社員も含めたものです。そこに妥協はしません。

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