経営者保証を放置している社長は、経営を甘く見ている

これまで何度も書いてきた経営者保証の問題。この問題は2種類あって、ひとつは制度としての問題。もう一つは、社長自身の意識の問題。

制度としての問題は、これまで散々繰り返してきたので省きます。例えば下記のような記事を読んでいただければ、問題の大きさはご理解いただけると思います。

今日はもうひとつ、社長自身の意識の問題に焦点を当てます。

経営者保証をする社長は、実はそんなに深く考えていません。銀行は、ごく当たり前のようにサラッと要求してきますが、社長も「それが条件ならしょうがないよね」と、サラッと署名、捺印します。拒否して借りられなくなるなら、捺印して借りた方がいい。その気持ちはよくわかります。

私自身もずっとそうでした。「経営者保証は借り入れとセット」くらいの気持ちで、そこまで深く考えずに署名していました。

谷は突然来ることもある

しかし、経営は常に追い風であるはずはありません。山があれば必ず谷がやってきます。そして、その谷はある日突然来ることもあるのです

社会情勢の変化や、主要な取引先のトラブル、顧客の方針転換などなど、様々な原因で「青天の霹靂」的な状況に陥ることは、誰にでも起こり得るのです。

そんな時に、会社の余力(現預金、借入余力等)を超えるダメージを負った場合、金融機関は芸術的に掌を返します。それはもう、鮮やかに。何なら、入社後に掌返しの研修でも受けるのかと思うくらいに。

そのような状態の会社は、いつの間にか金融機関に生殺与奪権を握られています。そんな時に「今日から命を預けていただきます!」などと宣言があるはずもなく、いつの間にかそんな状況になってるのです。

私自身もそんな経験がありますが、銀行は何だかんだと理由を付けて、一括返済を求めてきます。できないと、口座を凍結します。社員への給振や取引先からの入金口座を、借入銀行以外の口座にするというテクニックは、この時のためです。

ともあれ、そんな谷がやってきたときに、社長に重くのしかかるのが経営者保証です。なんせ、会社の調子が悪い時は、まず自分の役員報酬を削ったり、私財を会社に入れるのが社長ですから、そんなときにこの連帯保証の存在は、それはそれは重くのしかかるのです

覚悟は尊い。しかし、自分の力ではどうにもできないこともある

多くの社長、特に創業オーナーは、人生を賭ける覚悟で経営に挑んでいます。私もその思いで「経営者保証くらい何てことない」くらいの気持ちでした。

しかし、上記で強調したように、経営は明日何が起こるかわからない世界です。特に今の混沌とした社会情勢ではなおさらです。

経営者保証の解消は、もちろん社長自身のためでもあります。しかし、解消までのプロセスは企業価値を高めることです。つまり、それはそのまま会社のため、社員や取引先などのステークホルダーのためなのです

その意味で、社長が最も優先すべきことが、経営者保証の解消(それに向けて経営改善すること)なのです。

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